ハイツ野菜研究部 中嶋大輔さん
亀岡市旭町
Interview
できないものを受け入れる
僕の農業は無施肥無農薬からはじまりました。基本的に土には何も入れないことにしていました。そうすることでその土地によって、できること、できないことがわかったんです。なのでここの土には、米ぬかを入れています。それ以外の物は何も入れてません。
自分のエゴで土と野菜が万能に作れる!なんて、あらぬ現状を想像し、ねじまげるのではなく 理解し合うことで、できないものは受け入れていくのが無施肥無農薬を基本とする形なのかなと思っています。
でも、あまり入れすぎると土本来の持っている物が分かりにくくなってしまうので、必要なミニマムの量を見極めようとすることがポイントですね。最初からドバっと入れ るのではなく、少ない量から始めていきます。 もし 無施肥でやりたいなら作物を絞り、無施肥で作れる野菜だけ作ってればいいんです! でも、商売ベースにはならないので、野菜づくりなのか、家庭菜園をしたいのかが線引きかなと思います。
旭町の土に合わせ、石灰を入れて作っているトマト
土の味を食べてもらいたい
僕は自分と、この畑に対して負荷のない野菜を作っています。
野菜の味って、土にイコールしてると思うんです。土の味を食べてもらいたい。野菜を食べたら、土の味分かります。何も入れてない土ほど味がないんです、味気ないんですよ。でもそれが僕が伝えたい味なんかなと思ってます。
大概の人は、自分の舌の感覚を信じてるような気がするんです。僕もそうですし。
例えば、カップヌードルは悪魔的な味で、美味しいじゃないですか。
そうではなく、その味を受け入れるっていう感覚で覚えてくれたらいいのかなと。好みを自分に寄せるのではなく、自分がその野菜の味を好みにするよう寄せていく。
好き嫌いではなく、こういう味なんだというのがわかれば、地味な味もいいものに感じるのかもしれないです。
甘くするのは、操作してるような箇所もあります。それが、必然的に甘いのであればその農家の売りやと思うんです。もちろん、品種のこともありますけど。
頭の中で考える農業はいくらでもできるんですよ。でも実際、身体を動かして働かないといけないので、そのバランスは一番大事かなと思います。
僕は就農する前にこんなふうになってるんじゃないかと頭の中で描き、無施肥でもこう育つだろうと想像していましたが、全く上手くいかないです。
現場に立ち、自分の農業をいち早く見出していくというのが大事かな、と思います。
落花生の芽。土の中の窒素を増やす役割がある
野菜の時間の感覚、土の時間の感覚
野菜の時間の感覚と、土の時間の感覚は違うと思います。
土が合わせてきてくれるとは僕には到底思えないし、自分の代でそれが解決するとは思わないです。
場所によっても、ケースバイケースがあるので、その場を見てどう施していくのかがテクニックかなと。だから、あの人がこんなことやってたからやってみようではなく、一回やって失敗した経験の方が生きると思います。自分のやってること、見てることを信じたほうが、早くその土地の土を知り、正解に繋がると思う。自分の目を信じてやってみてほしいですね。もちろん外からの意見も取り入れながら。
そうすることで、自分は何が作れるのか、何を作ればいいのかが見えてくると思います。
覚悟を持って
土地が変えられないなら、こっちでいかに変えていけるかが農家のあり方なのではないかと思います。いろんな条件があって、土に合わせてやることをできないこともあるんですよ。与えられた土地が農業に適しているわけではないので、農薬を使ったり肥料を使う場合もあるってことは知っといてほしいなと思います。みんな収量あげて、生活していくために覚悟を持ってやっています。
全部を否定するのではなく、色々なやり方があるんだと感じてもらいたいですね。
インタビュアー:滝田夕凪 (京都造形芸術大学文芸表現学科2年)
写真:大賀由佳子
インタビュー:2019年6月
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